第3章 プロジェクトSの創造

2015年2月16日

○ 第1章では(1)住民と行政が一体、(2)きめ細かい行政対応、(3)農林業・自然共生が基軸という今後の住田地域の3つの「地域づくりの理念」を示し、第2章ではその理念を踏まえ市町村合併に対する基本的な考え方を「当面は住田町で自立・持続」とし、その結論が成り立つための4つの条件を示した。
○ この章においては、これまでの「地域づくりの理念」や「自立・持続のための条件」を踏まえながら、今後、住田町が自立・持続していくために解決していかなければならない重要課題を克服するための一定の考え方に基づく事業群を「プロジェクトS」として示す。
○ 当委員会においては、この「プロジェクトS」を構築するに当たって、以下の3つの視点に留意したところである。
 (1) 自立・持続のために最優先して取り組まなければならない課題への対処
 (2) 箱ものでなく、ソフト施策やシステム構築が中心
 (3) これまでにない大胆な発想をベースにする
○ なお、「プロジェクトS」の「S」は、次の言葉の頭文字から採ったものである。
 (1) Sumita(住田), (2) Soft(ソフト事業), (3) Sustainable(持続可能)

 

(1)「森林・林業日本一の町づくり」プロジェクト

 

課題・背景・資源
  • 町面積の大半を占める豊かな森林の体系的な活用が必要であること
  • 町有林が全国最大規模であることをベースとした施策が可能であること
  • 当町の林業・製材業が「我が国の模範」となりつつあること
  • 木質バイオマスエネルギーの活用、森林認証への取組みなど当町の積極的な活動が全国的に注目されていること
施策の方向性
  • これまでの川上から川下までの林業・製材業のシステム維持・発展させていく
  • 森林・林業を取り巻く新しい課題に積極的に取り組むとともに、町内の森林や木材の付加価値を高めていく
  • 地域づくり・観光・教育・住宅・公共事業などあらゆる面で「木」や「森」をベースに事業等を展開していく
  • 「住田町」自身を森林・林業のブランドとして発信していく
  • 以上を総合的に推進し、町内外にアピールしていく
具体的事業・システム例
  • 町有林の計画的な整備
  • 川上~川下までの流れを確固たるものにするための支援
  • 木質バイオマスエネルギーの積極的な活用(廃棄物対策)
  • 森林認証など森林の付加価値を高める措置の積極的な展開
  • 日本一の森林教育の推進(学校教育・社会教育)
  • 「森林(もり)の科学館構想」の具体化(全町の「フォレストミュージアム」化)
  • 「森の地元学」や「木・森」を中心としたグリーン・ツーリズム(フォレストツーリズム)の展開
  • 特色ある特用林産物や木工等の展開
  • 住宅・公共事業への「地元材」の活用
  • 「森林・林業日本一の町」のPR・発信や視察等の積極的な受入
期待される効果
  • 町内経済の活性化
  • 町内雇用の創出
  • 住田町の特色の明確化及び町民の自信・誇りの醸成

 

(2)「宿場・賑わいルネッサンス」プロジェクト

 

課題・背景・資源
  • かつて世田米、八日町は気仙有数の宿場であったこと
  • 現在も盛岡・花巻・北上・胆江・遠野方面から大船渡・陸前高田方面に抜けるためには必ず住田町内を通過しなければならない交通の要衝であり、相当程度の交通量に基づく経済的価値があること
  • 種山、赤羽根の産直施設が一定の成功を収めていること
  • 特色ある農業の推進及び地域内加工等による付加価値生産性のさらなる向上が必要であること
  • 特色ある地域資源を積極的に活用するとともに住田町の良い面を積極的にPRしていく必要があること
施策の方向性
  • 交通量に基づく経済効果の活用(通過人口を交流人口へ)
  • 住田型産直システムの構築
  • 地域資源の掘り起こしと付加価値の地域内付与
  • 町の魅力のPR
具体的事業・システム例
  • 住民総参加型の産直の検討・試行・システム構築(産直資源の点検、整理を含む)
  • バザール型産直の検討・試行・システム構築(電子市場の検討を含む)
  • 5地区対抗型産直の検討・試行・システム構築
  • スローフ-ド・スローライフ型産直の検討・試行・システム構築
  • 上記試行の成果を踏まえたハード施策の検討・整備
  • 5地区特産品の加工・開発・販売
  • 安全・安心の農作物の生産・販売の体系化(担い手対策を含む)
  • 産直施設・市場周辺の魅力ある回廊・景観整備
  • 町のアピールサインの整備
期待される効果
  • 町内経済及び町民の活力向上
  • 交流人口の増加
  • 地域内付加価値生産性の向上
  • 町民所得の向上
  • 町内雇用及び新規事業の創出

 

(3)「地域協働システム構築」プロジェクト

 

課題・背景・資源
  • 行政事務の肥大化と財政難の中、事務・事業の選択・集中とともに行政を補完する住民の協働が必要であること
  • 住民ニーズの多様化と複雑化の中、政策形成過程への住民参加を図るとともに、適正な行政範囲を示していくことが必要であること
  • 民間・住民の柔軟な発想を行政に取り入れていく必要があること
  • 県内初の試みとして地区担当役場職員と住民が一体となった総合発展計画地区別計画が策定されることから、これを具体的に活かしていく必要があること
施策の方向性
  • 民官一体となった地域づくり(特に地区別計画の推進)
  • 住民の町政への協働・協力・参画
  • 民官の情報共有と民間能力の活用
  • 行政範囲の縮小と住民の自助・互助範囲の拡大
具体的事業・システム例
  • 総合発展計画地区別計画の推進組織の設置(住民・行政)
  • 総合発展計画地区別計画の民官一体となった具体化の推進
  • 各種行政計画の民官一体となった進捗状況の管理
  • 積極的な行政情報の公開による民官の情報共有
  • パブリックコメント(一定の計画・事業について素案の段階で住民から意見を聴く方式)の制度化
  • 行政分野各般にわたる町民勉強会(意見交換会)の実施
  • 町民懇談会等、住民の意見・疑問点を聴く場の制度化
  • 地区との各種協働協定の締結
  • NPO・ボランティア・公益団体等の育成・支援及び可能な行政事務の委託等積極的な活用
期待される効果
  • 自ら考え自ら実践する地域の資源・特色を活かした創造的な地域づくりが展開されること
  • 町政への参画による町民の自治意識・自治力の高まり及び住民満足度の向上
  • 町民の選択や協働・参画による町財政の負担軽減

 

(4)プロジェクトSの推進

○ 当委員会としては、以上の3つのプロジェクトを創出したところであるが、これはあくまでも総論的なものであり、その具体化のためには今後役場・事業者・町民が英知を結集してその推進を図っていく必要がある。
○ 以下、その推進体制(組織等)及び事業等の具体化において留意すべき視点について提言する。

ア 推進体制

(1) 平成14年度中に策定予定の住田町総合発展計画後期計画において、本プロジェクトを計画上の公式な最重点プロジェクトとして位置づけることが必要である。
(2) その上で、プロジェクトの具体化を体系的に推進するとともに進捗管理を行う役場内の組織を設置することが必要である。(プロジェクトチーム等)
(3) プロジェクトの具体的事業化については、厳しい財政状況を踏まえた予算査定において判断されるものであるが、様々な観点により各事業課において十分に検討された各プロジェクトに関連する事業については、相当程度優先的に予算化されるべきである。
(4) プロジェクトの具体化及び進捗状況については、毎年度点検するものとし、その結果は公開のうえ、広く町民の意見を聴くことが必要である。
(5) なお、「プロジェクトS」の集中推進期間は、原則として総合発展計画の期間(平成18年度まで)とする。

イ 各プロジェクトの事業等の具体化において特に留意すべき点

(1) 老若男女総参加の町づくり(特に高い高齢化率を踏まえた元気な高齢者の活躍)
(2) 遊休土地(特に農地)・遊休資産の積極的活用
(3) 先進事例を乗り越える研究の徹底と町外の「風の人・組織」との積極的な交流・連携
(4) 住田の住民自らが、住田をよく知り、そして住田を十分に楽しむこと